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【この曲を聴こう!】VENOM – Countess Bathory

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はじめに

1982年にリリースされたVENOMの2ndアルバム『Black Metal』は、ヘヴィメタルの常識を破壊し、後のスラッシュ・デス・ブラックといったエクストリームメタルの原点となった伝説的作品だ。暴走するスピードと荒削りな暴力性が支配する中で、異端の存在として静かに異彩を放つのが「Countess Bathory」である。実在した“血の伯爵夫人”を題材に、冷たく儀式的なリズムと不気味な旋律で描かれるこの曲は、速さではなく“邪悪の美学”で聴く者を圧倒し、アルバム全体の狂騒にひときわ深い闇を刻みつけている。

曲の魅力

イントロから放たれるヘヴィでシンプルなリフのループが、まず圧倒的な印象を残す。テンポはミドル寄りで、速さではなく圧力と不気味さで聴き手を包み込み、呪文のように繰り返される攻撃的なグルーヴが容赦なく引きずり込む。その“重さ”と“禍々しさ”の共存こそが、この曲をアルバムの中でも際立たせている理由だ。

そして「Countess Bathory」の最大の魅力は、何よりもその生々しい音の暴力にある。ギターは極限まで歪み、ベースは唸るように鳴り続け、ドラムは精密さよりも勢いと荒々しさを優先する。録音の粗さすらも武器となり、結果として「地獄の轟音」と呼ばれるVENOM特有のローファイなサウンドが生まれた。

さらに、タイトルに掲げられた“Countess Bathory(バートリ伯爵夫人)”は、16〜17世紀に実在した残虐な貴族エリザベート・バートリ、いわゆる“血の伯爵夫人”をモチーフとしている。少女の血で若さを保とうとしたという伝説を、VENOM流のオカルト/サタニックな美学で描き出し、当時としてはきわめて過激なテーマを提示した。この曲は後にブラックメタルの源流を形成したスウェーデンのBATHORYにバンド名の着想を与えたとも言われ、メタル史における象徴的存在となっている。

最後に

「Countess Bathory」は、VENOMが放った混沌と暴力の塊『Black Metal』の中で、唯一“静かな恐怖”をまとった曲だ。速さでも派手さでもなく、冷たい重さと邪悪な美学で聴く者を圧倒するその姿は、まさに暗黒の魅力そのもの。荒々しくも荘厳なその響きは、40年以上を経た今も色褪せることなく、エクストリームメタルが目指す“闇の原点”として鳴り響き続けている。

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Black Metal

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