はじめに
2000年代初頭、バンド形式のガールズユニットとして一世を風靡したZONE。代表曲「secret base 〜君がくれたもの〜」の印象が強い彼女たちだが、2002年リリースの「白い花」はその裏側にある静かな情感と成熟の兆しを感じさせる隠れた名曲だ。派手さよりも心の奥に染み込むようなメロディと、潔白なイメージの中に潜む切なさが、この曲の魅力をより深くしている。
曲の魅力
この曲の最大の魅力は、その世界観の静けさにある。“白い花”という象徴的なモチーフは、純粋さや別れ、そして記憶を意味しているように感じられる。歌詞の中で流れる過去へのまなざしは、聴く者それぞれの心に潜む情景を呼び起こす。ZONEの音楽に流れる“青春の終わり”というテーマが、ここではより穏やかで繊細な形で表現されている。
サウンドは極めてシンプルだ。ギターのアルペジオを中心にした構成が、ボーカルの透明感を際立たせている。感情を押しつけず、淡々と歌い上げるからこそ、かえって強い感情が伝わってくる。わずかなサビの高まりが胸を締めつけ、聴き終えたあとには温かな余韻だけが残る。
そして何より、ZONEのメンバーが当時まだ十代であったということだ。未完成ゆえの純粋さ、そして大人になりきれないもどかしさ。その狭間で揺れる感情が、「白い花」という楽曲の中に見事に結晶している。背伸びをしながらもどこか幼さを残した表現こそ、ZONEという存在の核心なのかもしれない。
最後に
「secret base 〜君がくれたもの〜」が夏の名曲なら「白い花」は冬の名曲である。前者が眩しい太陽の下で過ぎ去った青春を描いた歌なら、後者は雪の降る夜にそっと想い出を抱きしめる歌だ。季節は違えど、どちらにも変わらない純粋さと優しさが息づいている。
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