はじめに
今年のはじめ、ギタリストのジョン・サイクスが癌のため65歳で亡くなりました。
ジョン・サイクスはTHIN LIZZYやWHITESNAKEで活躍した後、BLUE MURDERという自身のバンドを結成しました。
ベースはトニー・フランクリン、ドラムはカーマイン・アピスという豪華なメンバーでした。
そんなBLUE MURDERの1stアルバム『Blue Murder』は大変素晴らしいアルバムだったのですが、その中でも自分が大好きな曲が「Billy」です。
曲の魅力
「Billy」は、1989年リリースのセルフタイトル・デビュー・アルバムに収録された、ジョン・サイクスによる幅広い魅力を放つハードロック・ナンバーです。
まず、ジョン・サイクスのギターはヘヴィでありながらメロディアスです。リフは、ヘヴィメタル的な重厚さと、ブルージーなニュアンスを併せ持っています。
ギターソロは、Blue Murderの全曲の中でも屈指の完成度を誇ります。高速パッセージは抑えめで、メロディを歌わせるような構成が中心。リズムやフレーズの“間”の取り方が絶妙で、余韻まで表現の一部として取り込んでいます。
また、リズム隊(ベース&ドラム)は、ジョン・サイクスのギターやボーカルを支えるだけでなく、曲全体のドラマ性や緊張感を根底から演出している重要な要素です。
伝説的なハードロック・ドラマー、カーマイン・アピスのプレイは派手すぎず、あくまで抑制された表現に徹しており、楽曲のドラマ性に寄り添うスタイル。テクニカルというより、「どう鳴らすか」「どのタイミングで叩くか」のセンスが圧倒的です。
そして、フレットレス・ベースの名手として知られるトニー・フランクリンのプレイは、「Billy」に深みと独特の浮遊感を与えています。
アピスのタメの効いたドラムと、フランクリンの丁寧なラインコントロールが融合することで、「Billy」の緩急ある展開が生きるのです。
最後に、ジョン・サイクスのボーカルは、単なるギタリストの「ついでの歌」ではなく、情感と説得力に満ちたメイン・ボーカリストとしての力強さを見せつけています。サイクスの声は、ややハスキーで中低域に厚みがあるのが特徴ですが、この曲では「Billy」という人物の悲哀や孤独、怒り、焦燥感を声色の変化で見事に表現しています。
最後に
「Billy」は、Thin Lizzyに通じる叙情性、映画的ストーリー性、そしてジョン・サイクスの二刀流の魅力が見事に融合した1曲です。
特に物語性のあるハードロックが好きな方には強くおすすめしたい1曲です。
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