はじめに
スラッシュメタルを代表するバンド、SLAYER。
彼らの数ある名曲の中でも、とりわけリスナーに強烈な衝撃を与える楽曲が『War Ensemble』である。
1990年発表のアルバム『Seasons in the Abyss』の冒頭を飾るこの曲は、戦争をテーマに掲げながら、その狂気と破壊力を音楽そのものに落とし込んだ傑作である。聴いた瞬間に引きずり込まれる攻撃性と緊張感は、三十年以上経った今も色褪せることがない。
この『War Ensemble』の魅力について語っていこう。
曲の魅力
『War Ensemble』はSLAYERの代表曲のひとつであり、スラッシュ・メタルの持つ攻撃性と緊張感を極限まで研ぎ澄ました名曲である。
第一に、そのリフの構築力が魅力である。冒頭から炸裂するギターリフは鋭利な刃物のように切り刻む感触を持ち、曲全体を支配する。カオスに陥らず、明確な構造を持ちながらも、常に破壊衝動を煽り立てる。
第二に、デイヴ・ロンバードのドラムである。圧倒的なスピードと精密さを兼ね備えたツーバスは、戦場のマーチを模したような規則性と、爆撃のような無慈悲さを併せ持つ。これにより、楽曲全体が「戦争」というテーマを音響的に体現している。
第三に、トム・アラヤのヴォーカルである。怒号と絶叫を往復するその声は、兵士の狂気と指揮官の檄を同時に響かせるかのようである。歌詞は戦争を善悪や感情で語るのではなく、戦場にいる兵士の感覚や戦争機械の現実をそのまま描写している。あえて肯定的な賛歌の形式をとることで、むしろ戦争の異様さや狂気を強烈に浮かび上がらせているのである。
そして、ケリー・キングとジェフ・ハンネマンのツインリードである。無秩序なようで計算されたノイズまじりのギターソロは、爆撃音や断末魔を想起させ、リスナーに戦場の錯乱を追体験させる。
総じて『War Ensemble』は、SLAYERがスラッシュ・メタルを通じて「戦争」という人類の狂気を音楽的に表現した究極の一曲である。その圧倒的な速度、破壊力、冷酷さが一体となり、聴く者を徹底的に叩きのめす芸術的暴力である。
最後に
『War Ensemble』は、単なるスラッシュメタルの名曲ではなく、戦争という人間の狂気を音で描き出した一つの「戦場体験」である。だからこそ、この曲はリリースから30年以上経った今も、ライヴの定番として鳴らされ続け、聴く者を熱狂と恐怖の渦へと引きずり込む。
もしSLAYERの真髄を一曲で知りたいのであれば、まずはこの『War Ensemble』を全身で浴びることが最良の入口である。
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