はじめに
2025年プロ野球もレギュラーシーズンが終わり、残すはCSと日本シリーズのみとなった。打撃タイトルや投手タイトルは確定したが、シーズンMVPを始めとする表彰選手の発表はまだ先だ。その中でも、先発投手にとって最大の栄誉である「沢村賞」について、誰が受賞に相応しいか考えたい。
沢村賞について
沢村賞(正式には沢村栄治賞)は、プロ野球草創期の名投手・沢村栄治投手(巨人)の功績をたたえ、プロ野球シーズン中に最も好成績を上げた「先発完投型」の投手に贈られる賞である。沢村賞選考委員会の審議によって原則として1名が選出される(まれに2名受賞したり「該当者なし」になることもある)。選考基準は以下の7項目。ただし、全て満たす必要はなく、あくまでも選考の目安である。
- 登板数 25以上
- 完投数 10以上
- 勝利数 15以上
- 勝率 6割以上
- 投球回数 200以上
- 奪三振 150以上
- 防御率 2.50以下
サイ・ヤング賞との比較について
ともに名投手の名前が冠されていることから、NPBの沢村賞とMLBのサイ・ヤング賞は比較されがちだが、個人的にこの比較はあまり意味がないと思っている。サイ・ヤング賞は「リーグ別に最も活躍した投手に贈られる賞」であり、「両リーグを通じて最も活躍した先発投手に贈られる賞」の沢村賞とは違うからだ。記者投票で決まるという点においても、サイ・ヤング賞はNPBではベストナイン(投手)の方が近いのではないだろうか。
2025年の沢村賞候補投手
さて、ここからが本題だ。2025年の先発投手の中から、沢村賞の候補となりそうな投手をリストアップした。前述の選考基準である7項目の他に、参考として「被打率」「K/BB」「QS率」「WHIP」も載せている。
※選考基準を満たした項目は太字、リーグトップの項目は赤字にしている。
選 手 | 球 団 | 登 板 | 完 投 | 投 球 回 | 防 御 率 | 勝 利 | 敗 戦 | 勝 率 | 奪 三 振 | 被 打 率 | K / B B | Q S 率 | W H I P |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
村上 頌樹 | 阪神 | 26 | 3 | 175.1 | 2.10 | 14 | 4 | .778 | 144 | .207 | 5.76 | 84.6 | 0.89 |
才木 浩人 | 阪神 | 24 | 3 | 157 | 1.55 | 12 | 6 | .667 | 122 | .214 | 2.77 | 66.7 | 1.06 |
東 克樹 | 横浜 | 24 | 2 | 160.1 | 2.19 | 14 | 8 | .636 | 123 | .235 | 4.73 | 75.0 | 1.05 |
モイネロ | ソフトバンク | 24 | 3 | 167 | 1.46 | 12 | 3 | .800 | 172 | .192 | 4.10 | 79.2 | 0.92 |
大関 友久 | ソフトバンク | 24 | 0 | 146.2 | 1.66 | 13 | 5 | .722 | 97 | .198 | 2.77 | 70.8 | 0.97 |
有原 航平 | ソフトバンク | 26 | 1 | 175 | 3.03 | 14 | 9 | .609 | 121 | .255 | 2.95 | 76.9 | 1.19 |
伊藤 大海 | 日本ハム | 27 | 6 | 196.2 | 2.52 | 14 | 8 | .636 | 195 | .241 | 6.72 | 81.5 | 1.06 |
今井 達也 | 西武 | 24 | 5 | 163.2 | 1.92 | 10 | 5 | .667 | 178 | .176 | 3.96 | 66.7 | 0.89 |
2025年の沢村賞はこの投手だ!
結論から言おう。私が選ぶ2025年の沢村賞投手は…伊藤大海だ!トップとなる3項目で選考基準を満たしているのに加えて、「投球回数」「勝利数」「防御率」も基準まであと少しだったというのが大きい。また、あくまでも参考ではあるが「K/BB」「QS率」もリーグトップであり、投球が安定していたことが分かる。以上から、伊藤大海が今年の沢村賞に相応しいと判断した。
村上頌樹は、セ・リーグの中ではトップの評価だった。3項目で基準を満たしているのに加え、「被打率」「K/BB」「QS率」「WHIP」も素晴らしい内容だった。ただ、基準7項目のうち4項目で伊藤大海が上回っており、伊藤に軍配が上がった。才木浩人と東克樹の2名は、全体的に村上頌樹に負けていた。モイネロは「防御率」と「勝率」で突出していたが、「投球回数」と「勝利数」がもう一つだった。大関友久は「奪三振数」の少なさ、有原航平は「防御率」の悪さが印象を悪くした。今井達也は、3項目で基準を満たしているのに加えて、「被打率」と「WHIP」で突出した数字を残しており、内容だけなら伊藤大海に負けてない。しかし、「勝利数」が伸びなかった。
最後に
という訳で、私は伊藤大海を今年の沢村賞投手に選んだ。しかし、実際に決めるのは選考委員会であり、誰が受賞するかは不透明だ。また、突出した成績を残した投手がいないことから、「該当者なし」に終わる可能性もある。
沢村賞は、例年通りであれば10月下旬に発表される。誰が受賞するのか、あるいは「該当者なし」なのか、要注目だ。
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