はじめに
野球のデータはいろいろあるけれど、自分が特に重視しているのが「出塁率」と「長打率」だ。出塁率はどれだけチャンスを作れるかを示す“チャンスメイクの力”、長打率は作られたチャンスをどれだけ得点につなげられるかという“ランナーを返す力”を表す。つまりこの2つを見れば、打線の流れや破壊力のイメージがある程度浮かび上がってくるのだ。
このコラムでは、「出塁率」と「長打率」の2つの数字だけを手がかりに、他の指標はすべて度外視して、歴代の強力打線を分析していきたい。記念すべき第1回目では、「水爆打線」として恐れられた1950年の松竹ロビンス打線を取り上げる。
1950年の松竹ロビンス打線
※チームトップを太字、リーグトップを赤字にしている。
打順 | 守備位置 | 選手 | 出塁率 | 長打率 |
---|---|---|---|---|
1 | ニ | 金山次郎 | .360 | .424 |
2 | 三 | 三村勲 | .366 | .406 |
3 | 中 | 小鶴誠 | .450 | .729 |
4 | 右 | 岩本義行 | .372 | .583 |
5 | 一 | 大岡虎雄 | .346 | .502 |
6 | 左 | 吉田和生 | .339 | .452 |
7 | 捕 | 荒川昇治 | .373 | .366 |
8 | 遊 | 宮崎仁朗 | .338 | .324 |
9 | 投 | 真田重男 | .392 | .448 |
打線の分析
全体的に高い出塁率
1950年の松竹ロビンス打線の特徴として、まず出塁率が全体的に高いことが挙げられる。1番低い選手でも.338であり、全員が少なくとも3打席に1回は出塁していたことが分かる。というか、真田重男の出塁率が投手のものとは思えない。この出塁率の高さが切れ目のない打線を作ったと言えるだろう。
7人が長打率4割超え
長打率も全体的に高く、1番から6番まで4割以上が並ぶ。9番も入れたら、長打率4割超えが7人も続く。というか、真田重男の長打率が投手のものとは思えない。長打率が高い選手が並んだことで、打線に爆発力が生まれた。
打線の柱「3番小鶴」
打線の中でも一際目立つのが、出塁率と長打率が共にリーグトップの小鶴誠だろう。小鶴は3番打者としてランナーを返すと共に、出塁してチャンスを作る役割もこなした。小鶴の前に出塁率の高い金山次郎と三村勲を、後ろに長打率の高い岩本義行と大岡虎雄を置いたことで、とてつもない爆発力を持つ上位打線が形成された。
穴のない下位打線
6番以降の下位打線も穴がない。6番吉田和生は高い長打率でクリーンナップが残したランナーを返したし、7番荒川昇治は高い出塁率でチャンスメイクができた。8番宮崎仁朗は長打率こそ低いが、出塁率は.338とまずまずだ。9番真田重男は投手の数字とは思えない。穴があるとしたら、真田以外の投手が投げているときの9番ぐらいか。
最後に
9番投手真田を含めてまったく隙がなく、3番小鶴を中心に破壊力抜群の打線を誇った。チームは137試合で実に908得点を記録し、この驚異的な数字は2025年の現在に至るまで日本プロ野球史上の最多得点記録として破られていない。
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